「尿漏れ手術」後、生活が一変しました。

ウォーキングも水泳も旅行も再開しました。

衛藤通則さん(1954年生まれ)
土木関係建設コンサルタント

骨盤底筋体操、尿取りパッド、レッグバッグ…
あらゆる対策を講じたが

前立腺がんの手術を受けたのは2008年2月、54歳の時でした。
がん告知はショックでしたが、全摘出すればかなりの確率で治ると聞き、迷わず全摘手術を選択しました。
主治医からは、「手術に伴って尿漏れが起こる。しかしほとんどの人が2~3ヵ月で治る」と事前に説明がありました。その言葉の通り、カテーテルを抜いた直後は1日1,000cc くらい尿が漏れ、パッドを1日数枚使っていたのが、2ヵ月経つと大体治まってきて、その後は尿取りパッドなしの普通の生活に戻りました。骨盤底筋体操も教わりましたが、体操をしていたのは術後2ヵ月間だけです。その後、尿漏れはまったくありませんでした。

それが、がんの手術から7年半経った2015年9月のことです。北海道を旅行中、突然漏れを感じたのです。帰宅後、漏れる量は徐々に増えていきました。当初200cc のパッドが1日1枚程度で済んでいたのが、翌年春の台湾旅行では2~3枚ないと済まなくなり、その後パッドではどうにもならなくなってしまいました。そこで、インターネットでいろいろ調べ、レッグバッグという脚に装着する蓄尿袋を使うことにしたのです。

仕事をしていることから、複数枚のパッドを持参すると、大きなカバンを持ち歩くことになる上、仕事場での処理も大変です。トイレの個室に入って、替えて……、気持ちの面での負担は今思い返しても、かなりのものだったと思います。レッグバッグは、パッドほど頻繁に処理しなくてもよいのですが、「尿漏れ」という事実から来る気持ちの負担は変わりません。加えて、費用が月に1万円程度と、経済的負担も重くなりました。

がんの手術をした病院の医師にも相談し、骨盤底筋体操もやりましたし、過活動膀胱の薬も飲みました。しかし、いずれも効果はありませんでした。いくつかの病院を回ったところ、とある医師が「“尿漏れ手術”という治療がある」と、同じ県内の尿漏れ専門の先生を紹介してくれました。尿漏れ手術のことは、すでに私もインターネットで調べ、いくつかの大学病院のサイトを見て知っていましたが、尿漏れ専門の先生に他の選択肢もあれば提示してもらいたい、と考え、受診しました。

医師の説明により、納得感を持って手術へ

結論としては、尿漏れ専門の先生からは、「現状では尿漏れ手術がよいと思います」と勧められました。人工尿道括約筋の模型を見せてもらい、手術の概要など、詳しく説明してもらいました。異物を体内に入れる不安はあったものの、レッグバッグでは何かの拍子に外れるリスクや、ペニスのかぶれ、費用面など使い続けることと比べても、「やはり尿漏れを治すには、この治療なのだな」と、手術に向けて心が決まりました。

しかし、家族は反対しました。実は妻と娘は看護師。二人とも尿漏れ手術や、人工尿道括約筋を知らなかったため、不安が先立ったのだと思います。その不安を、尿漏れの専門の先生が丁寧に説明してくれて、最後は、私の意思を尊重してくれました。

私の場合、尿道狭窄があり、その治療をした後、2017年3月に尿漏れ手術を受けました。手術そのものは1~2時間程度、入院期間は9日間でした。感染症もなく、無事退院となりました。

使用を開始したのは6週間後、外来で操作を教わりました。尿意を感じたらトイレに行き、人工尿道括約筋を操作して、尿を出します。尿の勢いは以前と同様に戻りました。念のために薄い尿取りパッドを当てていますが、ジーパンなどの堅い縫い目が人工尿道括約筋にふれて、椅子から立ち上がる時に少し漏れが生じた程度で、まずほとんど漏れません。

生活が一変した「尿漏れ手術」

唯一の心配は緊急時。万が一、意識を失った時など、医療者に人工尿道括約筋を入れていることをわかってもらえるように、いつも患者カードを肌身離さず持っています。

尿漏れ手術を受けるまでは、大好きだった温泉や宿泊を伴う旅行はとてもじゃないですが、行くことができませんでした。趣味のウォーキングも途中で帰ることもありました。しかし、とにかく今は、「尿漏れ手術を受けてよかった!」と実感しています。手術後は、何度も温泉に行っています。人工尿道括約筋は外から見えないため、安心して大浴場にも入れます。最近では沖縄旅行にも行って来ましたし、熱帯魚の水槽の水替えで重いものを持つ作業などをしても尿漏れの心配はありません。今は、ウォーキング、水泳と、思う存分身体を動かすことができます。生活が一変しました。本当によかったと思っています。

熱帯魚の水槽の水替えも、お孫さんをだっこするのも腹圧がかかるためできなかったが、今はまったく問題ないとのこと。夫婦共通の趣味の旅行やスポーツを満喫している。